第12回九州アレルギー週間記念講演会



主催:財団法人日本アレルギー協会九州支部

日時  平成18年2月19日(日) 13:00〜16:30
会場  天神ビル11F 10号会議室

テーマ アレルギーのガイドライン

司会 西間 三馨 先生(日本アレルギー協会九州支部長・国立病院機構福岡病院長

講師 「気管支喘息」      庄司俊輔先生(国立病院機構福岡病院副院長)
    「食物アレルギー」    柴田瑠美子先生(国立病院機構福岡病院小児科部長)
    「アトピー性皮膚炎」   占部和敬先生(九州大学大学院医学研究院皮膚科助教授)
    「花粉症」         川内秀之先生(島根大学医学部耳鼻咽喉科教授)

トピックス 今年のスギ・ヒノキ科花粉の飛散について
司会 石川 哮 先生(日本アレルギー協会常任理事・熊本大学名誉教授)
講師 岸川禮子 先生(国立病院機構福岡病院アレルギー科医長)

 《若大将からこのレポートに関して一言》

  このシンポジウムは、アレルギーに悩む一般の皆さんに正しい知識を身に付けて欲しいと
  アレルギー専門医の先生方から、ボランティアで開催していただいております。

  というのも、アレルギーに関しては特に、医師と本人や家族が協力し合って治療していかなければ
  十分な成果が上がらないものだからです。

  そういう意味でも、「このような会に参加できない方々にも皆さんから教えてあげて下さい。
  また、教えられるようにしっかり聞いて下さいね。」と西間先生も以前からおっしゃっておられました。

  という訳で、私は、このサイトを通じて皆さんに少しでもお役に立てればと考えております。

  毎年レポートを書いておりますので(多少重複することはありますが)、今回は、以前に書いていない
  内容や印象に残った部分だけを
私の言葉でレポートしています。

                          日本アレルギー協会 一般会員 須崎弘己

《若大将からこのレポートに関して一言》
毎年レポートを書いておりますので(多少重複することはありますが)、今回は、以前に書いていない内容や印象に残った部分だけをレポートしています。

 西間 三馨 先生のことば(要約)

最近では、色々な疾患に対する「治療・管理ガイドライン」が出来ています。
ガイドラインとは、その資料(本)に書いてある治療をやれば、例えば、過疎地の医療が薄い所に行っても、(仮に外科の医師であっても)ガイドラインを片手に治療をやれば、一定レベル以上の治療が受けられるというものです。

これは、医師にとって、また患者にとっても有意義なものです。
医師と患者で共通会話が出来るものなのです。

アレルギーは、ほとんどが慢性的な疾患なので、病院だけの治療では決してなく、患者自身が正しい知識を持ち、新しい知識を得て医療側と共同して治療する(一方的に治療を受けるのではなく、自分で治療していく要素が強い)疾患です。

そういう意味からも、このようなシンポジウム(講演会)の必要性を感じます。


 「気管支喘息」  庄司俊輔先生

喘息で死亡される方の数は、かなり減ってきました。
その要因には、吸入ステロイド薬の効果が大きいようです。

(色々なデータをあげてご説明頂きました。)

以前は注射や飲み薬により全身に行き、副作用も心配されましたが、吸入ステロイド薬は気管支だけに行くもので副作用もほとんどないのです。

また、発作時に気管支拡張剤を使うという治療から、吸入ステロイド薬を使って気管支の炎症を抑え予防することが大事と考えられるようになっています。

また、喘息の方は、ピークフローメーターによるモニタリングを勧めます。
ピークフローとは、十分息を吸い込んで思いっきり早く吐き出したときの最大の息の速さの事で、自覚症状がない軽度の喘息発作が起きた時も、気道の収縮やむくみなどにより、このピークフローは普段に比べ低下します。つまり気管支の状態を知ることが出来るのです。

これを記録していると自己管理できることはもちろん、治療の参考にもなります。


 「食物アレルギー」  柴田瑠美子先生

90%が小児で、0歳から1歳の場合が多いです。
また、アトピー性皮膚炎を合併することも多く、一般的には、鶏卵・乳・小麦が代表的で、そば・落花生などさまざまです。最近では、ゴマアレルギーも目立っているようです。

アナフィラキシーショック(アナフィラキシーの激しい場合で、じんましん・呼吸困難・下痢・低血圧などが起こり生命の危険をともなうもの。)こともあり気をつけなければいけません。

もしも食べてしまった場合の対処法は、まず、口から出して、すすぎ、持っている薬があれば服用することです。そして重症の場合は、すぐ救急車を呼ぶ必要があります。

一方、発育期の為、なんでも除去するのではなく、きちんと食物アレルゲンを病院で診断し特定して食事制限(除去)することが大事です。

また、これらの食物アレルゲンは、ずっと食べられないということではなく、1年(または1年以内)もすれば食べられるようになることが多いので、病院での診断後アドバイスを受けながら徐々に食べていくようにして下さい。

(ここで、印象的な質問が会場からありました。母親が孫に食事制限をしているケースで、おばあちゃんから「もう、そろそろ食べさせてもいいのではないでしょうか?」というものです。先生の答えは、「お母さんが完全に除去(食事制限)している場合、いきなり食べさせると少量でも大変危険です。必ず、病院で診断してもらってからにして下さい。」ということでした。)


 「アトピー性皮膚炎」   占部和敬先生

シャワーの回数を増やすことによって症状が緩和されるケースが、多数報告されています。学校の昼休みにシャワーを使わせた例や、保育園に行く前に1回、お昼休みに1回というように、通常より1回でも回数を増やすといいです。

もちろんスキンケアは大事で、刺激が弱い石鹸で、あまりこすらずに汚れを洗い流し、よくすすいだ後、保湿剤などでケアしましょう。

(ここで、私の質問で、発汗とスポーツについてお答え頂きました。)

発汗すること自体がアトピーに良くありませんが、だからといって何もさせないという事も考えものです。スポーツをしても、シャワーや洗顔などで汗を洗い流せる環境にあれば良いと思います。実際、スポーツをしている人と、していない人とのアトピー比率は関係ないようです。

ステロイドの塗り薬を症状によって処方することが1番効果的で、スキンケアと合わせて、きちんとコントロールすれば軽くなる病気です。急に塗るのを止めたりすることはいけません。

また、症状が重い方には紫外線療法も効果的です。
(映像で説明していただきました。)


 「花粉症」    川内秀之先生

初期療法が大事です。
花粉がちょろちょろ飛び始める頃、症状が出る前に、病院で適切な治療を受けていると本格的なシーズンになっても症状が軽くて済みます。

(ところで、この先生は、スギ花粉抗原の一部(ペプチド)を胚乳部分に発現させ蓄積したコメ(スギ花粉症緩和米)を開発し、このコメをマウスに経口投与すると、スギ花粉を浴びても花粉症症状(くしゃみ)が緩和されることを世界で最初に示し、コメを利用したペプチド免疫療法の有効性を科学的に証明し、さらに経口投与でのアレルギー緩和機能(免疫寛容)に関する免疫学的な作用機作を明らかにすることに成功した研究に携わった先生らしいのです。)

(その研究がテレビにも取り上げられておりVTRが放映されました。)

まだまだ、マウスの段階で実用化されるまでには、数年かかると思います。
米は毎日食べるものなので、これが実現すると花粉症に悩まされたという話しは過去のものになるかもしれません。


  トピックス 今年のスギ・ヒノキ科花粉の飛散について
司会 石川 哮 先生

昨年は、ものすごい量の花粉が飛ぶとの情報がマスコミ等で報じられました。だからかもしれませんが、花粉の本格的な飛散前に多数の方が受診されたようです。

さらに、昨年は気候の関係で、予想より飛び始めるのが遅くなり、結果的に沢山の方が初期治療されたかたちになり、沢山飛んだわりには危惧されていたほどではなかった気もします。

今年は、花粉の量が少ないというものの平年並みで、決して安心は出来ません。

特に、昨年沢山の花粉を吸っていた為に、今年になって急に発症するということも考えられます。このように、突然症状が現れるのがアレルギー症状の特徴です。

講師 岸川禮子 先生

花粉飛散状況を各地の拠点から情報を収集し、データ化しています。
飛散状況はホームページでも見ることができます。
http://www.fukuoka.med.or.jp/kafun/kafun.htm

花粉症の方は、これを参考にして自己管理していただけます。

スギの花粉は、もうすでに飛び始めています。
敏感な方は、少しの花粉にも反応してしまいます。

そして、スギの花粉飛散が終わった頃にひと段落し、ヒノキ花粉が飛び始めます。これは過去のデータにおいても言えるようです。

(色々なデータをスライドで示して頂きました。詳しいデータをここに書くことは出来ませんが、花粉症の方は、これらのデータを活用し本人なりの防御策を講じることが大事だな〜と改めて思いました。)

 以上、各先生とも私たちのために分かりやすく話して頂き、PM.1:00〜4:30 の3時間半、あっという間に過ぎたような気がします。毎年開催して頂くことに心から感謝申し上げます。




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